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短篇集(日文版)-第3部分

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払はうとする所を、耳木兎は蓋(かさ)にかかつて、嘴を鳴らしながら、又一突き――弟子は師匠の前も忘れて、立つては防ぎ、坐つては逐ひ、思はず狭い部屋の中を、あちらこちらと逃げ惑ひました。怪鳥(けてう)も元よりそれにつれて、高く低く翔(かけ)りながら、隙さへあれば驀地(まつしぐら)に眼を目がけて飛んで来ます。その度にばさ/\と、凄じく翼を鳴すのが、落葉の匂だか、滝の水沫(しぶき)とも或は又猿酒の饐(す)ゑたいきれだか何やら怪しげなものゝけはひを誘つて、気味の悪さと云つたらございません。さう云へばその弟子も、うす暗い油火の光さへ朧(おぼろ)げな月明りかと思はれて、師匠の部屋がその儘遠い山奥の、妖気に椋Г丹欷抗趣韦浃Δ省⑿募殼荬筏郡趣辘筏郡丹Δ扦搐钉い蓼埂
 しかし弟子が恐しかつたのは、何も耳木兎に襲はれると云ふ、その事ばかりではございません。いや、それよりも一層身の毛がよだつたのは、師匠の良秀がその騒ぎを冷然と眺めながら、徐に紙を展(の)べ筆を舐(ねぶ)つて、女のやうな少年が異形な鳥に虐(さいな)まれる、物凄い有様を写してゐた事でございます。弟子は一目それを見ますと、忽ち云ひやうのない恐ろしさに茫à婴洌─丹欷啤g際一時は師匠の為に、殺されるのではないかとさへ、思つたと申して居りました。

       十一

 実際師匠に殺されると云ふ事も、全くないとは申されません。現にその晩わざわざ弟子を呼びよせたのでさへ、実は耳木兎を唆(けし)かけて、弟子の逃げまはる有様を写さうと云ふ魂胆らしかつたのでございます。でございますから、弟子は、師匠の容子を一目見るが早いか、思はず両袖に頭を隠しながら、自分にも何と云つたかわからないやうな悲鳴をあげて、その儘部屋の隅の遣戸(やりど)の裾へ、居すくまつてしまひました。とその拍子に、良秀も何やら慌てたやうな声をあげて、立上つた気色でございましたが、忽ち耳木兎の羽音が一層前よりもはげしくなつて、物の倒れる音や破れる音が、けたゝましく聞えるではございませんか。これには弟子も二度、度を失つて、思はず隠してゐた頭を上げて見ますと、部屋の中は何時かまつ暗になつてゐて、師匠の弟子たちを呼び立てる声が、その中で苛立しさうにして居ります。
 やがて弟子の一人が、遠くの方で返事をして、それから灯をかざしながら、急いでやつて参りましたが、その煤臭(すゝくさ)い明(あか)りで眺めますと、結燈台(ゆひとうだい)が倒れたので、床も畳も一面に油だらけになつた所へ、さつきの耳木兎が片方の翼ばかり、苦しさうにはためかしながら、転げまはつてゐるのでございます。良秀は机の向うで半ば体を起した儘、流石に呆気(あつけ)にとられたやうな顔をして、何やら人にはわからない事を、ぶつ/\呟いて居りました。――それも無理ではございません。あの耳木兎の体には、まつ噬撙黄ァ㈩iから片方の翼へかけて、きりきりと捲きついてゐるのでございます。大方これは弟子が居すくまる拍子に、そこにあつた壺をひつくり返して、その中の蛇が這ひ出したのを、耳木兎がなまじひに掴みかゝらうとしたばかりに、とう/\かう云ふ大騒ぎが始まつたのでございませう。二人の弟子は互に眼と眼とを見合せて、暫くは唯、この不思議な光景をぼんやり眺めて居りましたが、やがて師匠に黙礼をして、こそ/\部屋へ引き下つてしまひました。蛇と耳木兎とがその後どうなつたか、それは誰も知つてゐるものはございません。――
 かう云ふ類(たぐひ)の事は、その外まだ、幾つとなくございました。前には申し落しましたが、地獄変の屏風を描けと云ふ御沙汰があつたのは、秋の初でございますから、それ以来冬の末まで、良秀の弟子たちは、絶えず師匠の怪しげな振舞に茫à婴洌─丹欷皮黏吭Uでございます。が、その冬の末に良秀は何か屏風の画で、自由にならない事が出来たのでございませう、それまでよりは、一層容子も陰気になり、物云ひも目に見えて、荒々しくなつて参りました。と同時に又屏風の画も、下画が八分通り出来上つた儘、更に捗(はか)どる模様はございません。いや、どうかすると今までに描いた所さへ、塗り消してもしまひ兼ねない気色なのでございます。
 その癖、屏風の何が自由にならないのだか、それは誰にもわかりません。又、誰もわからうとしたものもございますまい。前のいろ/\な出来事に懲りてゐる弟子たちは、まるで虎狼と一つ檻(をり)にでもゐるやうな心もちで、その後師匠の身のまはりへは、成る可く近づかない算段をして居りましたから。

       十二

 従つてその間の事に就いては、別に取り立てゝ申し上げる程の御話もございません。もし強ひて申し上げると致しましたら、それはあの強情な老爺(おやぢ)が、何故(なぜ)か妙に涙脆(もろ)くなつて、人のゐない所では時々独りで泣いてゐたと云ふ御話位なものでございませう。殊に或日、何かの用で弟子の一人が、庭先へ参りました時なぞは廊下に立つてぼんやり春の近い空を眺めてゐる師匠の眼が、涙で一ぱいになつてゐたさうでございます。弟子はそれを見ますと、反つてこちらが恥しいやうな気がしたので、黙つてこそ/\引き返したと申す事でございますが、五趣生死(ごしゆしやうじ)の図を描く為には、道ばたの屍骸さへ写したと云ふ、傲慢なあの男が、屏風の画が思ふやうに描けない位の事で、子供らしく泣き出すなどと申すのは、随分異なものでございませんか。
 所が一方良秀がこのやうに、まるで正気の人間とは思はれない程夢中になつて、屏風の剑蛎瑜い凭婴辘蓼怪肖恕⒂忠环饯扦悉ⅳ文铯⒑喂胜坤螅軞蒴dになつて、私どもにさへ涙を堪へてゐる容子が、眼に立つて参りました。それが元来愁顔(うれひがほ)の、色の白い、つゝましやかな女だけに、かうなると何だか睫毛(まつげ)が重くなつて、眼のまはりに隈(くま)がかゝつたやうな、余計寂しい気が致すのでございます。初はやれ父思ひのせゐだの、やれ恋煩ひをしてゐるからだの、いろ/\臆測を致したものがございますが、中頃から、なにあれは大殿様が御意に従はせようとしていらつしやるのだと云ふ評判が立ち始めて、夫(それ)からは誰も忘れた様に、ぱつたりあの娘の噂をしなくなつて了ひました。
 丁度その頃の事でございませう。或夜、更(かう)が闌(た)けてから、私が独り御廊下を通りかゝりますと、あの猿の良秀がいきなりどこからか飛んで参りまして、私の袴の裾を頻りにひつぱるのでございます、確、もう梅の匂でも致しさうな、うすい月の光のさしてゐる、暖い夜でございましたが、其明りですかして見ますと、猿はまつ白な歯をむき出しながら、鼻の先へ皺をよせて、気が摺悉胜い肖辘摔堡咯fましく啼き立てゝゐるではございませんか。私は気味の悪いのが三分と、新しい袴をひつぱられる腹立たしさが七分とで、最初は猿を蹴放して、その儘通りすぎようかとも思ひましたが、又思ひ返して見ますと、前にこの猿を折檻して、若殿様の御不興を受けた侍(さむらひ)の例もございます。それに猿の振舞が、どうも唯事とは思はれません。そこでとう/\私も思ひ切つて、そのひつぱる方へ五六間歩くともなく歩いて参りました。
 すると御廊下が一曲り曲つて、夜目にもうす白い御池の水が枝ぶりのやさしい松の向うにひろ/″\と見渡せる、丁度そこ迄参つた時の事でございます。どこか近くの部屋の中で人の争つてゐるらしいけはひが、慌(あわたゞ)しく、又妙にひつそりと私の耳を茫筏蓼筏俊¥ⅳ郡辘悉嗓长馍à筏螅─染菠蓼攴丹膜啤⒃旅鳏辘趣忪(もや)ともつかないものゝ中で、魚の跳る音がする外は、話し声一つ聞えません。そこへこの物音でございますから。私は思はず立止つて、もし狼藉者(らうぜきもの)でゞもあつたなら、目にもの見せてくれようと、そつとその遣戸の外へ、息をひそめながら身をよせました。

       十三

 所が猿は私のやり方がまだるかつたのでございませう。良秀はさもさももどかしさうに、二三度私の足のまはりを駈けまはつたと思ひますと、まるで咽(のど)を絞められたやうな声で啼きながら、いきなり私の肩のあたりへ一足飛に飛び上りました。私は思はず頸(うなじ)を反らせて、その爪にかけられまいとする、猿は又水干(すゐかん)の袖にかじりついて、私の体から辷(すべ)り落ちまいとする、――その拍子に、私はわれ知らず二足三足よろめいて、その遣り戸へ後ざまに、したゝか私の体を打ちつけました。かうなつてはもう一刻も躊躇してゐる場合ではございません。私は矢庭に遣り戸を開け放して、月明りのとどかない奥の方へ跳りこまうと致しました。が、その時私の眼を遮(さへぎ)つたものは――いや、それよりももつと私は、同時にその部屋の中から、弾かれたやうに駈け出さうとした女の方に驚かされました。女は出合頭に危く私に衝き当らうとして、その儘外へ転び出ましたが、何故(なぜ)かそこへ膝をついて、息を切らしながら私の顔を、何か恐ろしいものでも見るやうに、戦(をのゝ)き/\見上げてゐるのでございます。
 それが良秀の娘だつたことは、何もわざ/\申し上げるまでもございますまい。が、その晩のあの女は、まるで人間が摺膜郡浃Δ恕⑸àい埽─人饯窝郅擞长辘蓼筏俊Q郅洗螭gやいて居ります。睿Г獬啶激à凭婴辘蓼筏郡椁Α¥饯长丐筏嗓堡胜窑欷垦Fや袿(うちぎ)が、何時もの幼さとは打つて変つた艶(なまめか)しささへも添へてをります。これが実際あの弱々しい、何事にも控へ目勝な良秀の娘でございませうか。――私は遣り戸に身を支へて、この月明りの中にゐる美しい娘の姿を眺めながら、慌しく遠のいて行くもう一人の足音を、指させるものゝやうに指さして、誰ですと静に眼で尋ねました。
 すると娘は唇を噛みながら、黙つて首をふりました。その容子が如何にも亦、口惜(くや)しさうなのでございます。
 そこで私は身をかゞめながら、娘の耳へ口をつけるやうにして、今度は「誰です」と小声で尋ねました。が、娘はやはり首を振つたばかりで、何とも返事を致しません。いや、それと同時に長い睫毛(まつげ)の先へ、涙を一ぱいためながら、前よりも緊(かた)く唇を噛みしめてゐるのでございます。
 性得(しやうとく)愚(おろか)な私には、分りすぎてゐる程分つてゐる事の外は、生憎(あいにく)何一つ呑みこめません。でございますから、私は言(ことば)のかけやうも知らないで、暫くは唯、娘の胸の動悸に耳を澄ませるやうな心もちで、ぢつとそこに立ちすくんで居りました。尤もこれは一つには、何故かこの上問ひ訊(たゞ)すのが悪いやうな、気咎めが致したからでもございます。――
 それがどの位続いたか、わかりません。が、やがて明け放した遣り戸を椋Г筏胜樯伽筏仙蠚荬瓮剩à担─幛郡椁筏つ铯畏饯蛞姺丹膜啤ⅰ袱猡Σ芩兢赜鶐ⅳ辘胜丹ぁ工瘸隼搐胝嗓浃丹筏辘筏蓼筏俊¥丹Δ筏扑饯庾苑证胜椤⒑韦姢皮悉胜椁胜い猡韦蛞姢郡浃Δ省⒉话菠市膜猡沥嗣{されて、誰にともなく恥しい思ひをしながら、そつと元来た方へ歩き出しました。所が十歩と歩かない中に、誰か又私の袴の裾を、後から恐る/\、引き止めるではございませんか。私は驚いて、振り向きました。あなた方はそれが何だつたと思召します?
 見るとそれは私の足もとにあの猿の良秀が、人間のやうに両手をついて、黄金の鈴を鳴しながら、何度となく丁寧に頭を下げてゐるのでございました。

       十四

 するとその晩の出来事があつてから、半月ばかり後の事でございます。或日良秀は突然御邸へ参りまして、大殿様へ直(ぢき)の御眼通りを願ひました。卑しい身分のものでございますが、日頃から格別御意に入つてゐたからでございませう。誰にでも容易に御会ひになつた事のない大殿様が、その日も快く御承知になつて、早速御前近くへ御召しになりました。あの男は例の通り、香染めの狩衣に萎(な)えた烏帽子を頂いて、何時もよりは一層気むづかしさうな顔をしながら、恭しく御前へ平伏致しましたが、やがて嗄(しはが)れた声で申しますには
「兼ね/″\御云ひつけになりました地獄変の屏風でございますが、私も日夜に丹栅虺椋à踏─螭扦啤⒐Pを執りました甲斐が見えまして、もはやあらましは出来上つたのも同前でございまする。」
「それは目出度い。予も満足ぢや。」
 しかしかう仰有(おつしや)る大殿様の御声には、何故(なぜ)か妙に力の無い、張合のぬけた所がございました。
「いえ、それが一向目出度くはござりませぬ。」良秀は、稍腹立しさうな容子で、ぢつと眼を伏せながら、「あらましは出来上りましたが、唯一つ、今以て私には描けぬ所がございまする。」
「なに、描けぬ所がある?」
「さやうでございまする。私は総じて、見たものでなければ描けませぬ。よし描けても、得心が参りませぬ。それでは描けぬも同じ事でございませぬか。」
 これを御聞きになると、大殿様の御顔には、嘲るやうな御微笑が浮びました。
「では地獄変の屏風を描かうとすれば、地獄を見なければなるまいな。」
「さやうでござりまする。が、私は先年大火事がございました時に、炎熱地獄の猛火(まうくわ)にもまがふ火の手を、眼のあたりに眺めました。「よぢり不動」の火焔を描きましたのも、実はあの火事に遇つたからでございまする。御前もあの剑嫌兄扦搐钉い蓼护Α!
「しかし罪人はどうぢや。獄卒は見た事があるまいな。」大殿様はまるで良秀の申す事が御耳にはいらなかつたやうな御容子で、かう畳みかけて御尋ねになりました。
「私は鉄(くろがね)の鎖(くさり)に俊àい蓼筏幔─椁欷郡猡韦蛞姢渴陇搐钉い蓼工搿9著Bに悩まされるものゝ姿も、具(つぶさ)に写しとりました。されば罪人の呵責(かしやく)に苦しむ様も知らぬと申されませぬ。又獄卒は――」と云つて、良秀は気味の悪い苦笑を洩しながら、「又獄卒は、夢現(ゆめうつゝ)に何度となく、私の眼に映りました。或は牛頭(ごづ)、或は馬頭(めづ)、或は三面六臂(さんめんろつぴ)の鬼の形が、音のせぬ手を拍き、声の出ぬ口を開いて、私を虐(さいな)みに参りますのは、殆ど毎日毎夜のことと申してもよろしうございませう。――私の描かうとして描けぬのは、そのやうなものではございませぬ。」
 それには大殿様も、流石に御驚きになつたでございませう。暫くは唯苛立(いらだ)たしさうに、良秀の顔を睨めて御出になりましたが、やがて眉を険しく御動かしになりながら、
「では何が描けぬと申すのぢや。」と打捨るやうに仰有いました。

       十五

「私は屏風の唯中に、檳榔毛(びらうげ)の車が一輛空から落ちて来る所を描かうと思つて居りまする。」良秀はかう云つて、始めて鋭く大殿様の御顔を眺めました。あの男は画の事と云ふと、気摺彝瑯敜摔胜毪趣下劋い凭婴辘蓼筏郡ⅳ饯螘rの眼のくばりには確にさやうな恐ろしさがあつたやうでございます。
「その車の中には、一人のあでやかな上※(「藹」の「言」に代えて「月」、第3水準1…91…26)が、猛火の中に姢蚵窑筏胜椤灓ǹ啶筏螭扦黏毪韦扦搐钉い蓼工搿n啢蠠煠搜蹋à啶唬─婴胜椤⒚激蝻A(ひそ)めて、空ざまに車蓋(やかた)を仰いで居りませう。手は下簾(したすだれ)を引きちぎつて、降りかゝる火の粉の雨を防がうとしてゐるかも知れませぬ。さうしてそのまはりには、怪しげな鷙鳥が十羽となく、二十羽となく、嘴(くちばし)を鳴らして紛々と飛び繞(めぐ)つてゐるのでございまする。――あゝ、それが、その牛車の中の上※(「藹」の「言」に代えて「月」、第3水準1…91…26)が、どうしても私には描けませぬ。」
「さうして――どうぢや。」
 大殿様はどう云ふ訳か、妙に悦ばしさうな御気色で、かう良秀を御促しになりました。が、良秀は例の赤い唇を熱でも出た時のやうに震はせながら、夢を見てゐるのかと思ふ眨婴恰
「それが私には描けませぬ。」と、もう一度繰返しましたが、突然噛みつくやうな勢ひになつて、
「どうか檳榔毛の車を一輛、私の見てゐる前で、火をかけて頂きたうございまする。さうしてもし出来まするならば――」
 大殿様は御顔を暗くなすつたと思ふと、突然けたたましく御笑ひになりました。さうしてその御笑ひ声に息をつまらせながら、仰有いますには、
「おゝ、万事その方が申す通りに致して遣はさう。出来る出来ぬの詮議は無益(むやく)の沙汰ぢや。」
 私はその御言を伺ひますと、虫の知らせか、何となく凄じい気が致しました。実際又大殿様の御容子も、御口の端には白く泡がたまつて居りますし、御眉のあたりにはびく/\と電(いなづま)が走つて居りますし、まるで良秀のもの狂ひに御染みなすつたのかと思ふ程、唯ならなかつたのでございます。それがちよいと言を御切りになると、すぐ又何かが爆(は)ぜたやうな勢ひで、止め度なく喉を鳴らして御笑ひになりながら、
「檳榔毛の車にも火をかけよう。又その中にはあでやかな女を一人、上※(「藹」の「言」に代えて「月」、第3水準1…91…26)の装(よそほひ)をさせて仱护魄菠悉丹ΑQ驻赛煙とに攻められて、車の中の女が、悶え死をする――それを描かうと思ひついたのは、流石に天下第一の剑龓煠陇洹0幛皮趣椁埂¥f、褒めてとらすぞ。」
 大殿様の御言葉を聞きますと、良秀は急に色を失つて喘(あへ)ぐやうに唯、唇ばかり動して居りましたが、やがて体中の筋が緩んだやうに、べたりと畳へ両手をつくと、
「難有い仕合でございまする。」と、聞えるか聞えないかわからない程低い声で、丁寧に御礼を申し上げました。これは大方自分の考へてゐた目ろみの恐ろしさが、大殿様の御言葉につれてあり/\と目の前へ浮んで来たからでございませうか。私は一生の中に唯一度、この時だけは良秀が、気の毒な人間に思はれました。

       十六

 それから二三日した夜の事でございます。大殿様は御約束通り、良秀を御召しになつて、檳榔毛の車の焼ける所を、目近く見せて御やりになりました。尤もこれは堀河の御邸であつた事ではございません。俗に雪解(ゆきげ)の御所と云ふ、昔大殿様の妹君がいらしつた洛外の山荘で、御焼きになつたのでございます。
 この雪解の御所と申しますのは、久しくどなたも御住ひにはならなかつた所で、広い御庭も荒れ放睿膜旃皮凭婴辘蓼筏郡⒋蠓饯长稳藲荬韦胜び葑婴驋呉姢筏空撙蔚蓖屏郡扦搐钉い蓼护Α¥畅fで御殻à剩─胜辘摔胜膜棵镁斡恧紊悉摔狻方扦螄gが立ちまして、中には又月のない夜毎々々に、今でも怪しい御袴(おんはかま)の緋の色が、地にもつかず御廊下を歩むなどと云ふ取沙汰を致すものもございました。――それも無理ではございません。昼でさへ寂しいこの御所は、一度日が暮れたとなりますと、遣(や)り水(み
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